コラム

【次世代エネルギー全解明】完全地熱図鑑

燃料が不要で天気の影響も受けない地熱発電は
自然エネルギーの優等生と言えるでしょう。
幸いにも火山の多い日本には、
地熱発電の資源がいっぱいです。
だけど、導入量は他のエネルギーに押され気味。
そんな地熱発電の基本から課題までを
日本地熱協会の齋藤徹事務局長に伺いました!

Q.1 地熱発電の仕組みは?

A.1 火山の多い地域では、地下1000m~3000mぐらいに、マグマの熱で高温になった地熱資源が存在します。そこへ雨や雪が地表から浸透すると、地熱流体という高温・高圧の物質になります。それがたまっているところを地熱貯留層と呼びます。

 地熱発電は、地熱貯留層のある場所に井戸(生産井)を掘ることから始まります。そこから地熱流体を取り出すと、地上に近づくにつれて圧力が下がり、沸騰して蒸気と熱水になります。そこから蒸気だけを取り出し、タービンを回転させることで発電します。これが基本的な地熱発電の仕組みです。

Q.2 地熱発電に種類はあるの?

A.2 現在の主流はフラッシュ発電と、バイナリー発電の2種類です。フラッシュ発電は、200℃以上の高温地熱流体から直接蒸気を取り出して発電します。

 バイナリ―発電は地熱流体が200℃以下の場合に、水よりも沸点の低いペンタンなどの二次媒体(液体)を注入し、地熱流体で温めて蒸発させることで発電する方法です。バイナリ―発電は、80℃以上あれば発電できる一方、設備が複雑になるので建設コストは高くなります。

 また、フラッシュ発電には、シングルフラッシュやダブルフラッシュと呼ばれる発電方法がありますし、大分県では蒸気と熱水の両方でする湯煙発電に取り組む企業もあるなど、細かく分けると様々な種類の発電方法が存在します。

Q.3 地熱発電の長所って?

A.3  まず挙げられるのは、発電に燃料が不要なことです。発電所の建設から運用までのトータルなCO2排出量(ライフサイクルCO2)は、水力発電に次いで少なく、環境に優しいエネルギーと言えます。

 さらに、地熱発電は太陽光や風力などのように天候に左右されません。設備容量が少なくても発電電力量が多いため、設備の利用率が高いです。うまくいけば、70〜80%の利用率で稼働できますし、大分県には90%以上の発電所も存在します。ベースロード電源として、点検時以外は24時間365日安定して発電できる点は魅力です。

Q.4 日本の地熱発電の現状は?

A.4 日本で現在稼働している地熱発電所は32か所あります。発電出力は合計で約52万kWあり、世界で9番目です。

Q.5 地熱発電の盛んな国ってどこ?

A.5 最も多いのはアメリカで、フィリピンなども盛んです。また、アイスランドは総発電量に占める地熱発電の割合が約3割にも上ります。

Q.6 日本は地熱発電に適している?

A.6 火山が多く地熱資源が豊富な点では適していると言えるでしょう。

 しかし、地熱資源の約80%は、自然公園法で保護された国立・国定公園内に眠っています。それらの地域で発電所を作ることは最近まで禁止されていました。2012年に規制緩和が実施されたことで、一部地域で環境省が優良事例と判断した場合に限り、開発が認められるようになりました。ただ、何をもって優良事例と判断するかは、今も話し合いを行っている最中です。

Q.7 地熱発電所を作るにはどれくらいの時間と費用が必要?

A.7 3万~5万㎾の大規模発電所を作る場合の例ですが、まず地表調査に1~3年、調査のための井戸を掘って蒸気の噴出量を測るのに2~3年かかります。そこで持続的に発電できると判断した後に、環境アセス(メント)と呼ばれる環境への影響調査を3~4年かけて行います。それが終わるとついに本格的な井戸を掘り、発電設備を建設しますが、これも3~4年は必要。つまり、運転するまで約10年の歳月を費やします。

 費用については、調査段階の井戸を掘るだけで2~3億円かかりますし、環境アセスに入るまでに数十億円、発電所の建設費用は数百億円に上ります。

Q.8 地熱発電の課題は?

A.8 多大な時間と費用が必要です。発電に適した地熱貯留層も簡単に探し当てられるわけではありません。投資費用を回収するにも10年以上かかるため、投資判断のリスクが高いです。

 また、地熱発電に適した地域では、温泉事業を営まれている方が多く、地元の理解を得ることも大変です。これまで地熱発電が温泉に影響を与えた事例はありませんが、温泉事業者の強い反対で開発を断念したケースもあります。

Q.9 今後の地熱発電はどうなるの?

A.9 国としても日本に存在する豊富な地熱資源を活かすために、地熱発電の導入拡大を推進する方針を掲げています。2030年までに約100万kW増やす目標も示されました。具体的には発電した電力の買取価格を数年先まで保証することで投資リスクを軽減するほか、環境アセスの迅速化を図るなどの動きが出ています。当協会でも、関係省庁への要望や話し合いを通じて、地熱発電の導入拡大を目指していきます。

日本地熱協会 事務局長
齋藤 徹

さいとう・とおる
昭和23年生まれ。日本地熱協会の事務局長を務める。
協会の立ち上げメンバーでもあり、地熱発電の推進に尽力する。

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