値下げやサービス合戦の過熱は大都市圏のみ。
地方都市は置いてきぼり、と冷ややかな目で見守る人も多いはず。
そもそも電力を選びたくても、選択肢が少ないからだ。
そんな状況のなか、地域密着を志す新電力が登場している。
キーワードは『地域の活性化』と『地産地消』。
彼らは地元住民の心をつかめるか。
Jリーグクラブが電気を!?
地域密着モデルのスポーツといえば、サッカーを思い浮かべる人が多いのではないか。日本のトップリーグであるJリーグは現在50チーム以上存在するが、その多くは地方都市に本拠地を構える。豊富な地域戦略を持つJリーグクラブとともに、電力自由化に臨む新電力がいる。
茨城県水戸市の水戸電力は2015年4月、太陽光発電の販売・施工などを手掛けるスマートテックと、Jリーグクラブ・水戸ホーリーホックの共同出資で誕生した地域新電力だ。元々、スマートテックがホーリーホックの看板スポンサーを務めていた縁で、協業体制により新電力事業を行うことになったという。
サッカーと電力はどのように融合するのか。スマートテック経営企画室室長の今泉嘉之氏は、「試合会場でのイベントをはじめ、電力の契約者へ観戦チケットをプレゼントするなど、地元の皆さんがワクワクするような企画を考えたい」と構想を語る。
さらに、水戸電力は電力の販売を通じて、地域活性化に貢献したい考え。今後は地元企業との提携によるセット割引や、地元商店街で使用できるポイントの付与といったサービスも提供していく予定だ。
「ホーリーホックと協業したことで、他の地元スポンサー企業とのネットワークが広がった。現在はスキームの構築段階だが、地域を巻き込んでお互いが潤う仕組みを作れたらいい」(今泉室長)。

【写真】水戸電力は地元出身の元サッカー日本代表・鈴木隆行氏を地域貢献アドバイザーに迎えた
ブランド農産物を無料配布
九州地方の最南端に位置する鹿児島県でも、太陽光システムの販売会社が設立した2つの新電力が、地域密着型の戦略を掲げている。
鹿児島電力は、電力の契約者に、じゃがいもなど鹿児島産のブランド農産物を年1回無料配布するという。恵拓海事業部長は、「農家のなかには、作った農産物をどうPRしたらいいかわからない人もいる。また、品質に問題なくても、一部に傷がついて商品として出荷できない農産物がある。そのようなB級品をサンプルとして、鹿児島県内の契約者に無料で届ける。農家のPRに役立つし、廃棄してしまう農産物の地産地消にもなる。電力の販売をそのきっかけにしたい」と話す。
鹿児島電力が目指すのも、地域の活性化。他に地元商店街と連携したサービスなども検討している。恵事業部長は、「電気料金の価格競争は、一定の時期になれば水準が決まるだろう。付随するサービスの比較で選ぶ需要者が増えると考えている。自由化以降も様々な企画を実現したい」と今後の展望を話す。
1軒1軒も地元企業ならでは?
ネクストパワーやまとは、鹿児島県内を中心に3000件の太陽光システムの設置実績を持つ大和電機グループの新電力だ。「電気工事から始まり、10年以上前から太陽光やオール電化の販売・施工・メンテナンスをしてきた」(岩﨑健太社長)という同社。電力の販売になっても、既存顧客や問い合わせに対して1軒1軒訪問し、地道に説明や営業を行う。その取り組みは変わらないという。
岩﨑社長は「昔から自分たちは、お客様のご自宅にお伺いするスタイルなので、それを継続していくだけ。ご家庭で電力自由化の基本的なことからしっかり説明する。そのうえで個別に試算をしてご契約をいただく」と話す。
大和電機は霧島市や日置市など、県内の中心部から離れた位置に拠点を構える。また、九電管内は全国的にも電気料金が安いという背景もある。大手企業の足が届きにくい地域であるため、地元住民との信頼関係がカギになるのかもしれない。
岩﨑社長も、鹿児島県で電力を販売するポイントは『人』だと認識する。「自治体単位で地域性は違う。それをしっかり把握して、のなかで一番いいご提案をしていく。短期ではなく、長期的にサポートするなど、地域とのつながりが重要だ。電力自由化に対しての捉え方も都市部とは違う。実際に、地域の企業から電気が買えるなら電力を切り替えたいという、ありがたいお話も聞いている」。
地域で産んで地域で使う!
地域の電力会社といっても取り組み方は様々。だが、彼らは『エネルギーの地産地消』で共通する。再生可能エネルギーなど地域に眠った資源から、電力をつくり、その電力は地域内で消費しようという取り組みだ。
水戸電力では、水戸市内の建物に太陽光システムを設置し、そこで発電した電力を自社で買取り、電力の契約者に供給する予定だ。またネクストパワーやまとでも、すでに稼働する25MWの太陽光発電所から、電源の一部を調達し供給するという。
地域新電力は、資金力や事業規模で大企業に敵わない。だからこそ、地域資源をたくみに使い、電力を産み、使うという地域貢献性を目指す。「地元の電力会社で電気を買う」という選択肢は4月以降、どこまで地方で受け入れられるのだろうか。