電気を自由に選べる時代になったとき、どのタイミングが乗り換えを検討しやすいだろうか。
その一つが“転居”。念願のマイホームや分譲マンションを購入することもあれば、転勤や進学などで賃貸住宅を借りることもある。一軒家だと、1度購入してしまえば、10年以上定住することも少なくないが、賃貸住宅だと入・退去はひんぱん。でも、そのタイミングが電気を乗り換えるチャンスになる。
そのチャンスを狙って、すでに電力事業を手掛ける賃貸管理大手がいる。大東建託グループやレオパレス21は、新電力を立ち上げ、一般家庭向け電力小売りへの展開を模索中だ。
「賃貸住宅だと、入・退去という機会が必ず訪れる。そこをうまく捉えれば、スムーズに切り替えてもらえる」(大東建託グループの新電力、大東エナジーの望月寿樹社長)。
大東建託は90万戸、レオパレス21は55万戸の賃貸管理物件を持つ。電力自由化後は、両社ともまず自社管理物件に電気を供給していく方針だ。レオパレス21の新電力、レオパレス・エナジーの蘆田茂社長は、「まずは新規で契約する方を優先して対象にしたい。我々の年間契約数は短期も含めて約40万件。それに水道・光熱費込みで部屋を提供していることもあり、その場合、切り替え手続きはスムーズに進む」という。
住宅・土地統計調査(2013年)によると、全国5237万世帯のうち、借家は1856万世帯。割合にして約35%を占める。持ち家との大きな違いは、単身世帯の方が、2人以上の世帯よりも多いということだ。単身世帯ということは当然、電気使用量も少ない。電気代だけで他の賃貸住宅と差をつけるのはやはり難しい。
大東エナジーの望月社長は、「我々は入居される方々に対して、どのようなサービスを提供できるかという観点から、付加価値を提供したい」と話す。
これまでの物件選びだと、家賃やエリアのほか、最寄駅からの距離や築年数、間取りや設備などをチェック、複数の候補物件を比較し、最終的に決めてきた。だが、これからはその選定基準の一つに、電気+αのサービスが加わってくるかもしれない。
例えば、入居率が低い物件であれば、思い切って電気代を値下げして、プレミア感を付ける可能性もある。またHEMSやスマート家電が導入された賃貸住宅、いわば『スマート賃貸』が登場するかもしれない。
それに、前の住まいで利用していた電気+αのサービスをそのまま使いたいことだってあるだろう。せっかくためたポイントや特典を捨てるのはもったいない。
「退去されて当社以外の物件に移ったとしても、電気は当社から継続して購入してもらえるといいですよね」(レオパレス・エナジーの蘆田社長)。
賃貸住宅にお住まいであれば、せっかくの機会だ。今春以降の引越しと一緒に、電気の乗り換えを考えてみてはいかが。